ふたご座 神話

 

ふたご座に関する神話をいくつかの書籍より集めています。

~~~~~~~~~~ 

「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」編

~~~~~~~~~~ 

 

★卵から生まれた2人の勇士
 イオニア海を臨むペロポネソス半島都市国家・スパルタの王妃レダはある日、白鳥の姿をした大神ゼウスに欺かれて交わり、2つの卵を生み落とした(白鳥座を参照)。
 1つの卵からは兄カストルと姉クリュタイムネストラ、もう1つの卵からは弟ポルックス(別名ポリュデウケス)と妹ヘレネの4人の赤子が生まれた。
このうちカストルクリュタイムネストラレダの夫・スパルタ王テュンダレオスの血を引く普通の人間であったが、ポルックスヘレネはゼウスの血を引く不死の身体をもっていた。
 カストルポルックスの兄弟はとても仲が良く、カストルは乗馬と軍事、ポルックスは拳闘に優れた腕をもっていた。
とくにポルックスは鍛冶の神ヘパイストスに頼んで鉄の手首をつけてもらい、鉄の手をつけたポルックスは1人で一軍にも匹敵する強さを示したという。
 2人はイアーソーンのアルゴ号探検隊の冒険などにも参加している。
途中立ち寄ったベブリュクス人の国で、旅人に拳闘の試合を申し込んでは負かし、相手を殺すか奴隷としてしまう残虐な王アミュコスを、ポルックスが拳闘の試合でうち負かしている(アルゴ号座を参照)。


 2人はともにスパルタの名だたる勇士であったが、あるとき叔父レウッキッポスの唄をさらって妻にしたことから、従兄弟であるイーダス、リュンケウスと争いになっか(略奪した牛の分配をめぐって、という説もある)。
 戦いの最中、カストルはイーダスの放った矢に当たり、死んでしまった。
 ポルックスも無数の矢傷を受けていたが、ゼウスの血を引くポルックスは不死の身体であったので死ぬことはなく、逆にリュンケウスを投げ槍で貫いて殺した。
残るイーダスは背を向けて逃げようとしたところをゼウスの放った雷に打たれ、死んでしまた。
 こうして戦いには勝利したものの、ポルックスは兄の死を激しく嘆き悲しんだ。
 良れに思ったゼウスはポルックスを天上に連れて行って神の一員にしようとしたが、ポルックスは「兄と一緒でなくては嫌だ」と肯んじなかった。

 ゼウスは仕方なくカストルポルックスの不死性を半分分け与え、1日おきに天上界と人間界で暮らすこととした。そして、やがて2人は星となり、双子座となったのである。

★妹を救つた兄弟
 さてカストルポルックスの2人には、ゼウスとレダの交わりによって生まれた妹、ヘレネがいた。
ヘレネはのちにトロイア戦争のきっかけともなったほどの絶世の美女である。
幼いころからたいそう美しかったため、12歳のときにアテナイの英雄テセウスによってさらわれてしまった。
 テセウスはアルゴ号探検隊でともに冒険をした仲間であったが、カストルポルックスは妹がさらわれたと知るやすぐに兵を率いてアテナイに攻め込んだ。
 偶然、テセウスは親友ペイリトオスと地獄への探索行に出かけていてアテナイにはいなかった。アテナイはあっけなく陥落し、2人は以前からアテナイ玉座を狙っていたメネステウスを王にして、ヘレネを無事連れ帰ったのであった。

★夫殺しの姉
 さて、兄弟のうち残る1人のクリュタイムネストラだが、彼女にはあまり芳しくない伝説が残っている。
 クリュタイムネストラは、トロイア戦争ギリシア軍の総大将を務めたミュケーナイの王、アガメムノンの妻となっていた。
 アガメムノントロイアに攻め込むため、アウリスの港から自らの艦隊を出航させようとしたのだが、そのとき吹いていた風が突然やんで出航できなくなってしまった。
 これは、月の処女神アルテミスの仕業であった。実は以前アガメムノンが狩りに出かけたとき、アルテミスの鹿を殺してしまったことがあり、怒ったアルテミスが風の神アイオロスの助けを借りてアガメムノンの邪魔をしていたのである。
 アルテミスはアガメムノンにF許して欲しくば、そなたの娘イピゲネイアを生け贄に捧げよ」と神託を告げた。
 アガメムノンは悩んだ末、仕方なくイピゲネイアを生け賀に捧げることとした。
 だがもし、クリュタイムネストラがこのことを知ってしまったら絶対に反対するだろう。
そこでアガメムノンは、クリュタイムネストラには「イピゲネイアをアキレウスの妻にする」と嘘を教え、こっそりとイピゲネイアを生け贄に捧げてしまった(エウリピデスの戯曲『アウリスのイピゲネイア』によると、イピゲネイアが祭壇の上で首にナイフを当てられたときに奇跡が起こり、祭壇にはイピゲネイアの代わりに1頭の牝鹿が倒れていたという)。
 ともあれ、こうしてアガメムノンはアルテミスの怒りを鎖め、トロイアヘと遠征して行ったのである。

 だが、偶然真実を知ってしまったクリュタイムネストラは、アガメムノンを激しく憎んだ。
クリュタイムネストラアガメムノンの従兄弟アイギストスと手を組み、アガメムノンに復讐を誓った。
 クリュタイムネストラアガメムノンが戦争から戻ると、首と袖を閉じて縫いつけた服を用意し、アガメムノンが入浴している間に着替えをその服とすり替えてしまった。
入浴を終えたアガメムノンはなにも知らずにその服を着ようとしたが、首も袖も縫いけられているのでうまく着ることができない。
服を相手に格闘しているところへ刃物を手にしたクリュタイムネストラがやってきて、アガメムノンを刺し殺してしまったのである。
 こうしてクリュタイムネストラは復讐を果たし、アイギストスがミュケーナイ王となった。

 しかしこの恐るべき所業は自らにもわざわいを呼び込むこととなった。
アガメムノンの子、オレステウスは親戚にあたるポーキスの領主ストロピオスのもとに預けられ、7年間をそこで過ごした(あるいはアイギストスクリュタイムネストラの手によって殺されようとしていたが、姉のエレクトラの手引きによって逃げ出し、ストロピオヌのもとに身を寄せたともいう)。
  そして7年を経たあと、オレステウスはひそかに再びミュケーナイに戻り、アガメムノンの墓前に詣でた。
 そこでオレステウスは偶然、墓前に供物を捧げにきたエレクトラと再会し、ともに父アガメムノンの仇をとることを誓った。
 2人は知恵を合わせ、オレステウスを使者に変装させて「オレステウスは死んだ」という知らせをアイギストスのもとへ届けることにしたのである。
 首尾良くアイギストスの前に出ることのできたオレステウスは、手斧を振るってアイギストスを殺し、その亡骸に駆け寄ったクリュタイムネストラをも洙殺した。
 かくて再び復讐はなされたのだが、親殺しの罪は神々にとっても許し難く、復讐の女神エリニュスの裁きによってオレステウスは狂乱のうちに諸国を放浪する運命を担わされるのである。

~~~~~~~~~~

「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」