おとめ座 神話

 

おとめ座に関する神話をいくつかの書籍より集めています。

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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」編

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 ★さらわれた娘
 大神ゼウスと豊穣の女神デメテルには、ペルセポネーという娘がいた。
 ベルセポネーは草木を愛し、毎日のように草原を駆け回っては美しい花を摘んでいた。
あるとき、いつものように花を摘みに出かけたペルセポネーは、素晴らしく見事な水仙の花が咲いているのを見つけた。ペルセポネーは大喜びで、さっそくその花を摘み取ろうとした。
 ところがペルセポネーが花に手を伸ばした瞬間、大地に巨大な裂け目が現れ、冥王ハデスが黒馬に乗って飛び出してきた。
ハデスは悲鳴を上げるペルセポネーを無理矢理に黒馬に乗せると、自らの領土である冥界へとさらって行ってしまったのである。
 これは、すべてハデスのたくらみであった。ハデスは冥界よりペルセポネーを見初め、妻にしたいと願っていたのだ。
 また、このことに関して実はゼウスも一枚かんでいた。
ハデスから相談をもちかけられたゼウスはペルセポネーをハデスの妻とすることに賛成したが、デメテルはまちがいなく反対するだろうと思っていた。
そこでこのような策を弄し、ペルセポネーをハデスにさらわせたというわけである。見事な水仙の花を咲かせたのはゼウスの力によるものとされている。
 ともあれ、こうして冥界に連れ去られたペルセポネーは、否応もなくハデスの妻とされてしまった。


デメテルの嘆き
 ペルセポネーがさらわれたときに発した悲嗚は、デメテルの耳にも届いていた。
しかし、大地に飲み込まれたペルセポネーの姿を見つけることはできなかった。
 デメテルは9日の間、食事も取らずに地上を探し回った。そして10日目の朝、デメテルのもとへ魔術の女神ヘカテがやってきた。
ヘカテはデメテルを慰め、事の一部始終を見ていたという太陽神ヘリオスのところヘデメテルを連れて行った。
 ヘリオスはペルセポネーがさらわれた経緯と、それにゼウスが荷担していることを話した。デメテルは自分の娘が暗い地の底へさらわれたことを知り、激しく憤った。
 ヘリオスは、「冥王ハデスなら、貴女にとっても決して恥ずかしい婿殿ではないでしょう。どうか怒りを鎮めていただけませんか」とデメテルを取りなしたが、デメテルの怒りはいっそう激しくなるばかりであった。
 デメテルはエレウシスの町の神殿に独り閉じ込もり、誰とも決して口をきかず、笑うこともやめてしまった。そのため地上のすべての作物は芽吹かず、実をつけなくなってしまったのである。当然の結果として地上には大飢饉が訪れた。
 困り果てた神々は何度もデメテルのもとを訪れては説得し、あるいは贈り物で懐柔しようとしたが、デメテルの怒りはとけなかった。
とうとうゼウスは、ハデスにペルセポネーを帰すように命じたのである。

★四季の顕れ
 こうしてペルセポネーはデメテルのもとへ帰ることができたのだが、ハデスはペルセポネーを送り返す際、見事な石榴(ざくろ)の実を1つペルセポネーに与えた。
ベルセポネーはその石榴があまりにおいしそうであったので、実を4粒だけ食べてしまった。
 しかし、冥界の食物を口にした者はいずれ冥界に戻らねばならぬという掟があった。
 石榴を4粒食べたペルセポネーは、1年のうち4ヵ月を冥界で暮らさねばならなくなり、その間デメテルは再び神殿にこもるようになった。
 こうして地上に草木が枯れ、決して芽吹くことのない「冬」が生まれたのである。

 

★美少年アドニス
 最後にもうひとつ、ペルセポネーにまつわる話をしよう。

 キュプロス島のエテイアースにはミュラ(もしくはスミュルナ)という娘がいたが、ミュラは美の女神アフロディテーヘの祭祀をおこたったために、呪いを受けて実の父親に恋心を抱くようになってしまった(南魚座を参照)。
 ミュラは顔を隠し、12の夜の間テイアースと臥所をともにして、子を身ごもった。
 その後、真相を知ったテイアースが激怒してミュラを追い出したため、ミュラは身重の身体を抱えて諸国を放浪しなくてはならなくなってしまった。
やがてアラビアの南サバの地で力尽きた彼女は、自らの犯した罪の償いとして自分の姿を没薬(ミル。ユリ科の桶物)の木に変えてしまった。
このとき、この木から生まれてきた子があった。世にもたぐい希なる美少年、アドニスである。赤子のうちから輝くばかりの美しさに、アフロディテーは夢中になってしまった。


 アフロディテーはアドニスを誰にも見せないように箱に入れ、冥界に赴いてペルセボネーに「決して中を見てはいけない」と言って預けた。
 だが、ペルセポネーは好奇心を抑えきれず、ついつい箱の中を見てしまった。
そして彼女もまた、アドニスの美しさに虜となってしまったのである。
 アフロディテーとペルセポネーはアドニスを奪い合い、激しく争った。ついにゼウスが仲裁に入り、アドニスに1年の1/3をアフロディテーのもとで、1/3をペルセボネーのもとで、残り1/3を好きなほうで暮らすように取り決めたのである。
 よぅやくアドニスは平和に暮らすことができるようになったが、のちに狩りの最中、大猪に襲われ角で突かれ、死んでしまうのである。
 このとき飛び散った直からアネモネ(観賞用の多年草。存に赤、青、紫邑などの花を咲かせる)の花が生まれたのだという。

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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」