いて座 神話

 

いて座に関する神話をいくつかの書籍より集めています。

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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」編

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★ペーレウスとケイローン
 ペーレウスはアイギーナ島の領主アイアコスの息子であったが、あるとき、円盤投げ競技の練習をしているときに過って異母弟のポーコスの頭に円盤を当ててしまい、死なせてしまうという事故が起きた(別説ではポーコスがなにかにつけて自分より優秀だったため、ペーレウスの双子の兄弟であるテラモーンと共謀して弟を殺したという説もある)。弟殺しの罪により、ペーレウスとテラモーンは国を追われることとなってしまった。

 

 テラモーンはアイギーナ島の近くにあるサラミス島へ渡り、サラミス島の王キュクレウスの娘グラウケーをめとって王位を継いだ。

 

 一方、ペーレウスははるかテッサリアまで赴いた。ペーレウスはテッサリアのプテイーアー国の王エウリュティオーンに罪を浄めてもらい、その娘アンティゴネーをめとって、エウリュティオーンの領上の3分の1を分け与えられた。

 

 さてそのころ、カリュドーンの地ではちょっとした騒ぎが起こっていた。

 

 カリュドーンの王オイネウスは神々に収穫を感謝する初穂の祭祀を執り行っていたのだが、どうしたことか月の処女神アルテミスヘの祭祀を忘れてしまった。これに腹を立てたアルテミスは、牛ほどもある野猪をカリュドーンに送り、暴れさせたのである。

 

 猪退治のため、各国から英雄が召集された。のちにアルゴ号探検隊を率いるイアーソーンや、それに同行したカストルポルックス兄弟(双子座)、アテナイの王テセウスとその友人ペイリトオスなど、世界に名だたる勇士たちが集まったのである。

 

 エウリュティオーンはオイネウスの息子メレアグロスの招きを受け、ペーレウスを伴ってこの猪退治に参加した。

 ところがこの猪狩りの最中、ペーレウスの投げた槍がエウリュティオーンの脇腹に当たり、この傷がもとでエウリュティオーンは死んでしまったのである。

 

 ペーレウスはプティーアーを追放され、イオールコス国へたどり着いた。ペーレウスはイオールコスの王アカーストスのもとに身を寄せ、罪を浄めてもらった。

 

 イオールコスではちょうどペリアース(イアーソーンの叔父)の追悼競技会が開かれており、ペーレウスもレスリングの試合へ参加することになった。

 

 試合は負けてしまったものの、その試合を見ていたアカーストスの妻、アステュダメイアはペーレウスに一目惚れをしてしまった。アステュダメイアはひそかにペーレウスに言い寄ったが、ペーレウスがそれを拒絶したため、怒ったアステュダメイアは、夫に「ペーレウスに襲われそうになった」と嘘をついた。

 

 アカーストスは激しく怒ったが、自分の手で客人を殺すことはためらわれた。そこで一計を案じ、ペーレウスを狩りに誘ってペーリオンの山中深くに連れ出した。

 

 狩りで何頭もの獲物をしとめたペーレウスは、疲れが出て眠ってしまった。アカーストスはこっそりペーレウスの剣を隠し、そのままペーレウスを山に置き去りにして帰ってしまった。目を覚ましたペーレウスは、驚いて自分の剣を探しているうち、そのあたりに棲む凶暴なケンタウロス族に襲われてしまった。

 

 武器はなく、周りをすっかり囲まれて、もはやこれまでかというとき、1人のケンタウロスが現れて、ペーレウスの命を救った。彼こそ、ケンタウロス族の長老にして賢者、ケイローンだったのである。

 


★ペーレウスとテティス
 テティスは海の老神ネーレウスの娘であった。大神ゼウスと海神ポセイドンはテティスを勝ち取るために争ったが、法の女神テミス(あるいはプロメーテウス)が「テティスより生まれる子は父をしのぐ者となるだろう」と予言したため、畏れをなした両神はあきらめざるを得なかった。

 

ゼウスは(なかばやけくそであったかもしれないが)テティスをペーレウスに与えることとした。しかし、テティスは人間の妻となることをよしとせず、水に姿を変えて海の中を逃げ回った。

 

 そこでケイローンはペーレウスに「テティスが陸に上がったときに捕まえ、いかなることがあっても放してはならぬ」と秘策を授けた。ペーレウスは言われたとおり、浜でくつろぐテティスを捕まえた。テティスは抵抗して炎や怪物、獅子や大蛇に姿を変えたが、ペーレウスはひしとしがみついて決して放さなかった。やがて精根尽き果てたテティスは、ついにペーレウスの妻となることを承諾したのである。

 

 のちにペーレウスとテティスの間に生まれた子がトロイア戦争で活躍した英雄アキレウスであり、ケイローンアキレウスの養育係も務めている。

 


ケイローンの死
 ぺーレウスの物語からしばらくたったあとのこと。英雄ヘラクレスが、飲んでいた酒の匂いにつられて寄ってきたケンタウロス族と戦ったことがあった(ケンタウルス座を参照)。

 ヘラクレスヒドラ(海蛇座)の猛毒を塗った矢でもって彼らを追い立て、逃げた幾人かをベーリオンの山中まで追いかけた。

 そしてケイローンの住む洞窟に、3人のケンタウロスが逃げ込んできた。

 追いかけてきたヘラクレスは洞窟までやってくると、深く考えることなく矢を洞窟に向けて打ち込んだ。ところが、その矢はケイローンの膝に当たってしまった。

 

 矢に塗られたヒドラの毒は触れた者を死ぬまで苦しめつづけさせるというものだ。

ケイローンはなまじ不死であったがために死ぬこともできず、このままでは永遠に苦しまなけれぱならない。

 

 ついに苦しみに耐えかねたケイローンは神々のひとりプロメーテウスに不死を譲り、死の中に安息を求めたのである。

 

 死後、ケイローンは多くの英雄を育てた功績により、ゼウスの手によって天上へと昇げられて、射手座になったという。

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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」