りゅう座

りゅう座に関するお話をいくつかの書籍より集めています。

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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」編

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■よく見える季節:春。
■20時南中の時期:8月2日
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 りゅう座北極星の近く、晩春から初夏にかけて見ることができる、S字型にうねる巨大な竜の形をした星座です。


 星座の中でもかなり大きな部類に入り、その威容は堂々たる竜の姿をまざまざと思い起こさせます。


 ヘルクレス座の足下に上下逆の五角形をしたりゅう座の頭がくるが、この五角形を形作るβ(ベータ)星ラスタバン、γ(ガンマ)星エルタニン(ともに「竜の頭」)は3等星でほかの星よりも目立つため、ちょうど竜の目のように見えます。


 また竜の尻尾の中ほどにあるα(アルファー)星トウバン(竜)は、紀元前2790年ごろには全天でもっとも天の北極に近かった星で、その前後数百年の間、北極星の役割を務めていました。このころ建設されたエジプトのクフ王の第1ピラミッドの入り口には水平面に対して31度の角度をもった通気口があり、おそらくは当時の北極星であったトウバンを観察するための孔だったと推測されています。

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 さて神話では、りゅう座は世界の西の果て、ヘスペリデースの園にある金の林檎の木を守る100の頭をもつ竜といわれている。でも実際に物語には登場せず、またヘスペリデースの金の林檎の話についてはヘルクレス座うしかい座で紹介しているので、ここ、ではもうひとつの神話、テーバイ国の始祖となったフェニキアの王子カドモスの神話を紹介しましょう。

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★竜の歯から生まれた戦士
 フエニキアにエウローペという美しい王女がいた。


 あるとき、海岸で戯れるエウローペを見初めた大神ゼウスは、1頭の美しい白牛に姿を変えてエウローペに近づき、彼女をクレタ島までさらっていってしまった(おうし座を参照)。


 エウローペの父親、フエニキアの王アゲーノールはポイニクス、キリクス、カドモスの3人の息子たちにエウローペの捜索を命じた。王の怒りようは凄まじく、息子たちに「エウローペが見つかるまでは帰国を許さぬ」と言い渡すほどであった。


 3人はそれぞれ国を出てエウローペを捜したが、いくら捜しても見つけることはできなかった(さすがに地中海を越えた、はるかクレタ島までは彼らの手の及ぶところではなかったのだ)。


 ボイニクスとキリクスはアゲーノールの怒りを恐れ、ついに国を捨てる決心をした。
2人はそれぞれの赴いた土地で町を作り、ポイニキア人とキリクス人の祖となった。


 さて残ったカドモスは、エウローペの居所を伺おうとデルフォイの神殿に赴き、太陽神アポローンに神託を求めた。


 するとアポローンは、カドモスのもとに1匹の牝牛を遣わした。そしてカドモスにもはやエウローペのことはあきらめ、この牛の後ろをついて行き、その止まった場所に町を建ててボイオディア(牝牛の町)と名付けるように命じた。


 牝牛はケーピソス川を渡り、パノペの野を越えてとある丘の上で足を止めた。カドモスはアポローンに感謝を捧げ、その丘に町を建設するためにゼウス(戦女神アテナとする説もある)への生け贄を捧げようと、3人の従者に森の洞穴の泉へ清水を汲みに行かせた。


 とろがその泉は軍神アレースの聖城で、アレースの子ともいわれる金色の鱗をもつ巨大な竜が棲んでいたのである。竜は3人の従者をたちまち殺し、食ってしまった。


 夕刻になり、カドモスは従者の帰りが遅いので様子を見に行くと、従者の死体を貪っている竜と出くわした。カドモスは剣を抜き、激戦の末に竜を討ち果たし、その顎を剣で木に縫い止めてしまった。この竜がやがて天に昇り、りゅう座になったといわれる。
 さて竜を倒したとはいえ大切な従者を失って、カドモスは独りきりになってしまった。


 するとそのとき、アテナがカドモスに神託を告げた。


「その竜の歯を抜き、地を耕してそこに蒔きなさい。そうすれば失った従者にも勝る、武に優れた民を手に入れることができるでしょう」


 カドモスは言われたとおりに竜の歯を抜き、地を耕してそこに蒔いた。すると大地から槍と甲冑をまとった戦士が何人も生まれ出て、互いに殺し合いをはじめたのである。
 カドドモスは恐れから武器を構えたが、彼らは「我らが戦いに加わらないでいただきたい」とカドモスを押しとどめ、自分たちだけの血なまぐさい殺りくへ没入していった。


 やがて戦いは終わった。生き残った戦士はエキーオーン、ウーダイオス、クトニオス、ビュベレーノール、ペローロスの5人だけであったが、彼らこそがもっとも屈強な戦士だった。戦士たちはカドモスに忠誠を誓い、協力してボイオディアの町を建設した。


 そして彼らがボイオディアの町の祖となり、やがてテーバイ国のもっとも古き家柄となったのだといわれる。

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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」