うしかい座

うしかい座に関するお話をいくつかの書籍より集めています。

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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」編

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■よく見える季節:6月ごろ。
■20時南中の時期:6月26日
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  うしかい座は春から初夏にかけて東の空に見られる、かなり大きな星座です。


 星座の形は長細い五角形をしており、その五角形を胴体と見て両手を振り上げ、両足を踏ん張っている巨人の姿が星図には描かれています。


 かなり古くから知られている星座ですが、この星座の元となった人物が誰であるのかは様々な説があり、はっきりしていません。うしかい座の名は、北斗七星を牛車に見立て、牛をひいて歩く牛飼いであるとしたことから付いた名です。なお、学名のBootesは、英語では2番目のo(オー)に別々に発音されることを示す分音符がつきます。そのため、学名はブーツでなく、ボオーテスと読みます。


 うしかい座の腰にあたる部分には夜空でもひときわ明るい1等星アルクトウールスがありますが、このアルクトウールスとは「熊を追う者」もしくは「熊の番人」の意味で、おおぐま座の隣にあることからうしかい座は熊を追う狩人であるとか、あるいは神話で熊に変化し、おおぐま座となった侍女カリストーの息子アルカス(こぐま座)であるなど、さまざまな説があります。


 また、うしかい座のすぐ西にはポーランド天文学者ヘヴェリウスが17世紀に設定した星座・りょうけん座がありますが、この2匹の猟犬はうしかい座の連れている猟犬でともに熊を追っているのだとされています。

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 うしかい座は天頂付近にある星座のため、ギリシアではうしかい座を天を支える巨人アトラスになぞらえることがある。ここではその巨人アトラスの神話について紹介しましょう。
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★天を支える巨人
 巨人アトラスは、かつて大神ゼウスの率いるオリュンポス神族との戦争で敗れた巨神族の1人で、ゼウスにより永久に天を担いで支えていなくてはならないという辛い役目を負わされていた。


 そんなあるとき、勇者ヘラクレスがアトラスのもとへとやってきた。彼はティーリェュンスの王エウリュステウスの命令で、12の功業のひとつ、西の果てに棲むヘスペリデースの園にある金の林檎を収りに行く途中だった(ヘルクレス座を参照)。


 ヘラクレスは金の林檎を探す旅の途中、岩山に縛りつけられていた賢者プロメーテウスを助けたことがあった。プロメーテウスは礼として、彼に金の林檎を手に入れるのなららアトラスに協力を頼むといいと教えてくれたのである(や座を参照)。


 アトラスはヘラクレスの話を聞くと、「それならわしが金の林檎を取ってくる間、わしに代わって天を支えていてくれ」とヘラクレスに言った。ヘラクレスは了承し、アトラスが戻ってくるまで天を支え続けることになった。


 やがてアトラスは金の林檎を携えて戻ってきたが、アトラスはこの天を支え続ける仕事に飽き飽きしていたので、ヘラクレスに仕事を押しつけようと考えた。アトラスは「わしが代わりにこの金の林檎を届けておいてやろう」と言ってそのまま立ち去ろうとした。


 ヘラクレスはアトラスのたくらみを見抜いたが、天を支えたままではアトラスを追いかけることもできない。そこで知恵を働かせて、アトラスに次のように言った。


 「やれやれ、そうしてくれるのはありがたいが、俺は天を担ぐのに慣れていないので肩が痛くてたまらない。どうすれば楽に天を担げるのか、ちょっとやって見せてくれないか?」

 

 単純なアトラスは、いいだろうと言って金の林檎を置くと、慣れた様子で天を担いで見せた。


 するとヘラクレスは素早く金の林檎を拾い上げ、そこからさっさと逃げてしまった。


アトラスがヘラクレスにだまされたと気付いても、もはやあとの祭りだったのである。


 のちにペルセウスペルセウス座)が人を石にしてしまう妖怪メドゥーサを退治したとき、天を支える仕事に疲れ果てていたアトラスはペルセウスに頼んでメドゥーサの心を自ら浴び、自分を石にしてもらった。


 やがてアトラスは星となったが、いまでもそのまま天を支え続けているのだといわれる。

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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」