うみへび座

うみへび座に関するお話をいくつかの書籍より集めています。

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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」編

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■よく見える季節:4月ごろ。
■20時南中の時期:4月25日
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うみへび座は春から夏にかけて南の空に見える、非常に大きな星座です。


頭はかに座の下から、胴体はろくぶんぎ座、コップ座、からす座のわきを通り、ケンタウルス座の頭部近くまできてようやく尾の先にたどりつきます。長さでは全天でもこの星座に勝るものはなく、角度にすれば100度以上もの幅をもっています。
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神話ではこのうみへびは、ヘラクレスの退治したレルネの化け蛇ヒドラということになっています。ヒドラは9本の頭をもつ蛇とされていますが、星座では1本しかありません。

ここでは、ヘラクレスがいかにしてヒドラを退治したか、その顛末について語っています。
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 ★不死身のヒドラ
 ギリシア最大の英雄ヘラクレスは大神ゼウスとミュケーナイの王女アルクメネーの間にできた子だったが、夫の浮気に加えてヘラクレスがひどく優秀な子だったので、ゼウスの妻である女神ヘーラーにひどく憎まれていた。


 ヘーラーはヘラクレスを苦しめるために陰謀をめぐらし、狂気の女神を遣わしてヘヘラクレスに狂気を取り憑かせ、彼の妻メガラとその間にできた3人の子をヘラクレス自身の手で殺させてしまったのである(ヘルクレス座を参照)。


 正気に返ったヘラクレスは自分のしてしまったことをひどく悔やみ、犯した罪を償うためにデルフォイの神殿に赴いて神託を受けた。それによると、ヘラクレスが罪を許されるためにはティーリュンスの王エウリュステウスもとで12年の間、仕えなくてはならないということであった。


 さて、エウリュステウス王は傲慢なくせに臆病であったので、屈強なヘラクレスを見て王座を奪われるのではないかと恐れ、彼を排除せんとしてネメアに棲む大獅子退治を命じた(しし座を参照)。


 ところがヘラクレスが見事大獅子を退治してしまったのを知り、エウリュステウスはさらに危険な使命を彼に与えた。それがレルネに棲む化け蛇ヒドラの退治である。


 ビドラは前に倒したネメアの大獅子と同じく、怪物エキドナとテュフォンの子で、9本の首をもち、うち1本は不死身であった。しかもどれかけを1つ切り落とすと、その切り口から新たな首が生えてくるのである(切り□から2本の首が生えてくるという説もある)。


 ヘラクレスは甥のイオラオスを件って、この蛇を退治しに出かけた。


 まずヘラクレスは火矢を用い、ヒドラをアミューモーネーの泉のそばにあった住処から追い出した。


 出てきたヒドラヘラクレスは得たりとばかりに押さえつけたが、ヒドラは尾をヘラクレスにからみつかせて抵抗した。また、ヘラクレスを憎むヘーラーが1匹の化け蟹(かに座)を遺わし、ヘラクレスの足をはさんで邪魔をした。


 ヘラクレスは化け蟹を踏みつぶして殺し、剣でヒドラを斬りつけたが、ヒドラは新しい首を生やすばかりでなんの効果もない。


 そこへイオラオスが機転を利かせ、火のついた薪を持って、ヒドラの首の切り口を焼いてしまった。するとヒドラは首を生やすことができなくなった。


 ヘラクレスは残る首すべてを切り落として傷口を焼き、不死の首は巨大な石の下敷きにした。こうしてヘラクレスはようやくヒドラを退治することができたのである。


 ヘラクレスは退治したヒドラの胴を裂き、猛毒をもつ肝の血に自らの矢の鏃(やじり)を浸して、恐るべき毒矢を手に入れた。


 のちにこれがケンタウロス族の賢者ケイローン(いて座)や、同じくケンタウロス族にしてヘラクレスの友フォーロー(ケンタウルス座を参照)、ヘラクレスが死ぬ原因を作った粗野なケンタウロスのネッソスをも殺すことになるのである。


 その後、ヒドラは天に昇り、星座となった。これがうみへび座である。なお、うみへび座の首が1本しかないのは、残りをすべてヘラクレスに切り落とされてしまったからだという。

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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」