かんむり座 みなみのかんむり座
かんむり座 みなみのかんむり座に関するお話をいくつかの書籍より集めています。
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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」編
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かんむり座
■よく見える季節:7月ごろ。
■20時南中の時期:7月13日
南のかんむり座
■よく見える季節:8月ごろ。
■20時南中の時期:8月25日
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かんむり座は7月ごろのほぼ天頂、うしかい座のそばに見られる小さな星座です。
正式にはみなみのかんむり座に対してきたのかんむり座というが、日本語では単にかんむり座と訳されています。
また、神話ではクレタ島の王女アリアドネーの冠とされているため、「アリアドナエア・コロナ」「コロナ・アリアドナエ」(ともに「アリアドネーの冠」の意味)と呼ばれることもあります。
星座の形は7個の星が半円を描くように並んでいて、中央のα星アルフェッカ(欠け皿)は2等星で、ほかの星よりもひときわ明るく輝いています。宝石のついた冠を連想することができる、美しい星座です。
一方、アラビアやペルシアでは冠座を「乞食の皿」「貧乏人の皿」と呼びます。これは星座が半円形を描いているため、縁の欠けた皿に見立ててそう名付けたられました。
またオーストラリアの土着民は、彼らの発明品であるブーメランに見立てています。
日本では「太鼓星」「車星」と呼ばれ、一部の地方では平将門の娘・桔梗姫の着けていた首飾りが星になったものとして「首飾り星」と呼ぶところもあります。
天の星々で作られた冠というのはいかにもロマンチックですが、この星座にまつわる神話も悲劇の多いギリシア神話においては珍しく、やさしさを感じさせるものです。
みなみのかん座は8月ごろ、いて座の南に見える星座です。
形、大きさともに冠座によく似ており、南冠座の名はそこから付けられたと推測されます。また、48星座を設定したプトレマイオスは「南のリース(花輪冠)」の名で星図に記しています。
みなみのかんむり座は「ケンタウロスの冠」「射手の冠」とも呼ばれることがあります。これは南冠座が射手座のすぐ南にあることからきています(いて座は半人半馬のケンタウロス族の賢者ケイローンをあらわしています)。
また、みなみのかん座の中央、かんむり座でいえばアルフェッカのある場所には、α星アルフェッカ・メリデアィナ(南の欠け皿)があります。かんむり座に対比して付けられた名ではないでしょうか。
残念ながら、南冠座について伝わっている神話はありません。
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★やさしき酒神
エーゲ海と地中海にはさまれたクレタ島に、ミノスという王がいた。
ミノスはかつて兄弟たちを退けて自分が王となるため、海神ポセイドンとある契約を交わした。人々に自分が神に選ばれた者であることを示すため、牡牛を1頭遣わしてくれるかわりに、その牛を生け賛として捧げるというものだった。
ミノスの祈りは聞き届けられ、海中より波を分けて1頭の立派な牡牛が現れた。
人々はこれを見てミノスを褒めたたえ、ミノスは晴れてクレタ島の王位に即いたのだった。
だがミノスは王位に即いたあと、ポセイドンから遣わされた牡牛があまりに見事だったので生け賛にしてしまうのが惜しくなり、別の牛を代わりに捧げて、その牡牛を自分の物としてしまった。
約束をたがえたミノスに怒ったポセイドンは、ミノスの妻パシパエがその牡牛に道ならぬ恋心を抱くように呪いをかけてしまった。パシパエは日々募る想いに煩悶を繰り返し、ついにアテナイから亡命してきた工人ダイダロスの知恵を借りて、恐るべき恋情を成就させてしまったのである。
この呪われた結びつきによって生まれた息子は、牛頭人身のミノタウロス(ミノスミの牛)という怪物であった(牡牛座を参照)。
怪物とはいえ自分の息子を殺すに忍びなかったミノスは、ダイダロスに命じて島の岩盤をくりぬいた迷宮を作らせ、その中にミノタウロスを閉じ込めた。さらに当時、クレタ島の支配下に置かれていたアテナイの町から毎年、もっとも美しい少年と少女を7人ずつ差し出させては、ミノタウロスの餌として迷宮に放り込んでいたのである。
この非道な行いをやめさせるため、アテナイの王子テセウスはミノタウロスを退治することを決意し、生け賛の少年たちに混じってクレタ島へと向かった。
やがて船はクレタに着き、ミノス王の前に14人の少年少女たちが並ばされた。
そのとき、物陰からその様子を眺めていた女性がいた。ミノスの娘、王女アリアドネーである。アリアドネーは並ばされた少年少女たちの中にテセウスを見つけ、一目で恋に落ちてしまった。
アリアドネーは、テセウスたちがミノタウロスの餌として迷宮に入れられることを知っていたが、彼女ではそれをやめさせることはできなかった。そこでダイダロスに知恵を借り、見張りの兵士の隙を見て、こっそりひと振りの剣と麻の糸玉をテセウスに渡した。
迷宮に入れられたテセウスは、麻糸を入り口の扉近くに結わえつけ、剣を手に恐れることなく迷宮の奥へと進んだ。
ミノタウロスは凶暴な恐ろしい怪物ではあったが、テセウスは激しい格闘の末、これを討ち果たした。そして麻糸をたぐって入り口まで戻り、かねてより示し合わせていたアリアドネーを連れて船を奪い取り、クレタ島を脱出したのである。
ところが、テセウスは途中立ち寄ったナクソス島で、戦女神アテナの「アリアドネーを置いてすぐに島を出よ」という神託を受けた。仕方なくテセウスは、アリアドネーが」眠っている隙に舶を出し、彼女を置き去りにしてアテナイヘ梱って行ってしまった。
愛するテセウスに置き去りにされ、アリアドネーは涙に暮れて海に身を投げようとしたが、そこに現れたのがナクソス島を支配していた酒神バッカスであった。バッカスはアリアドネーを慰め、やがてアリアドネーを妻に迎えた。
バッカスはアリアドネーに妻の証として、7つの宝石をちりばめた美しい冠を贈った。
アリアドーネはその後、バッカスの妻として幸福に暮らし、やがてアリアドネーが亡くなると、バッカスは妻に贈った冠を天に飾ったという。これが冠座となったのである。
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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」