へび座

へび座に関するお話をいくつかの書籍より集めています。

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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」編

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■よく見える季節:7月、8月ごろ。
■20時南中の時期:7月12日(頭)、8月17日(尾)

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 へび座は夏の南の空にへびつかい座と重なって存在する、珍しい星座です。

 形は西から東へ10個ほどの星が反り返るように並び、胴体の中央部分にあたる星をへびつかい座の腰部と共有しています。いちばん西側の端で星が小さな三角形を形作り、これが蛇の頭となっています。星座そのものはそれほど明るくはないですが、身をよじり、うねらせる蛇の姿が鮮明に浮かび上がってきます。

 星をいくつか共有していることからもわかるとおり、蛇座はもともと蛇遺座の一部として考えられていましたが、プトレマイオスが独立させました。星図では普通、へびつかい座につかまれた蛇の姿で描かれています。

 また、通常は頭から尻尾までを通してへび座とよびますが、へび座の西側半分を「カプト(Caput:頭)」、東側半分を「カウダ(Cauda:尾)」と呼ぶこともあります。

 蛇は医術のシンボルであり、とくにこのアスクレーピオス(へびつかい座)の持つ蛇は英知、慎重さ、回復力など、医療に関係するあらゆる能力の象微とされています。

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★薬草術のはじまり
 太陽神アポローンテッサリアの王女コローニスの息子にアスクレーピオス(へびつかい座)という者がいた。彼はケンタウロス族の賢者ケイローン(いて座)によって育てられ、さまざまな学問を身につけた。とくに医術にはきわめて優れた才能をもち、成人するころには師匠であるケイローンを追い越してしまうほどだった。

 あるとき、アスクレーピオスが友人の家を訪ねたとき、たまたま彼はそこで1匹の蛇を打ち殺してしまった。するとそこに別の蛇が現れ、草むらに入っていったかと思うと、1束の草をくわえて戻ってきた。そしてその草を死んだ蛇になすりつけると、死んでいたはずの蛇がたちまち生き返ってしまったのである。これを見てアスクレーピオスは薬草の効果を知り、医術の中に薬草術が生まれたという。

★アスクレーピオスの化身
 蛇は医術の象徴であると同時にアスクレービオスの使いであるともいわれている。

 紀元前293年にローマで悪疫が流行ったころ、アスクレービオスがローマに呼ばれたが、そのとき彼は蛇の姿をとって現れたという。

 アスクレーピオスは死後、医薬の神としてあがめられた。古代の地誌家たちの記したところによると、コリントスの南、エピダウロスにはアスクレーピオス大神殿があったという。この神殿には無数の蛇が養われているが、性格はおとなしく人に危害は加えないという。とくに薄茶色をした蛇はアスクレーピオスの使いとして神聖視されていた。医薬の神の神殿だけあって、神殿の周囲にはさまざまな病気・ケガの患者を治療できる施設が軒を連ね、宿泊のための設備が整っていたといわれる。

 また、コース島にもアスクレーピオスの神殿がある。コース島は温和な気候の土地として知られ、アスクレーピオスの末裔といわれるアスクレーピアダイの一族が居住しこいた。彼らは医学を教える医塾を開き、医聖と呼ばれるヒッポクラテースを輩出した。その遺風はローマ時代まで受け継がれ、コース学派の名を轟かせたのである。

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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」