はくちょう座

はくちょう座に関するお話をいくつかの書籍より集めています。

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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」編

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■よく見える季節:9月ごろ。
■20時南中の時期:9月25日
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はくちょう座は夏から秋にかけて天頂付近に見られる、巨大な白鳥の姿をした星座です。

はくちょう座は、七夕伝説で有名なわし座の1等星アルタイル(彦星)、こと座の1等星ベガ(織姫)の間にある天の川に、ちょうど橋を架けるような格好で浮かんでいます。

 星の配列はγ(ガンマ)星サドル(「胸」の意味)を中心に巨大な十字形を描き、南に向かって翼を広げ、飛んでいく雄壮な鳥の姿を思い起こさせます。ギリシアフェニキアでは南に渡っていく白鳥の姿としてとらえ、古代エジプトでは雌鶏と見立てたようです。アラビアでは「シンドバッドの冒険」に登場する巨鳥ロックや、飛びいく鷲として見ています。

 また、形がちょうど十字を描くので、南十字星に対して北十字星と呼ばれることもあります。

 近世になって白鳥座を「カルヴァリの十字架」「キリストの十字架」と呼ぶこともありました(「カルヴァリ」とは、ヘブライ語の「ゴルゴダ」のラテン語系英名。キリストが磔(はりつけ)にされた丘の名前で、元の意味は「頭骨」)。

 はくちょう座のα(アルファ)星、1等星デネブの名はアラビア語の「アル・ダナプ・アル・ダジャジャー(雌鶏の尾)」が短くなったものです。わし座のε(イプシロン)、ζ(ゼータ)にも同じくデネブという星がありますが、普通デネブといえばこの白鳥座の星を指します。

 もともと「デネブ」とは「尾」意味なので、動物を模した星座の名に付けられるのは、不自然なことではありません。

 はっきりと区別するときは「デネブ・~」と後ろに区別するための名前がつきます。白鳥座の場合はデネブ・キュグ(白鳥の尾)となります。


 β(ベータ)星アルビレオ(「くちばし」という意味だとする説がありますが、どうやらそれは誤りらしく、正確な語源・意味はわかっていません)は夜空でも代表的な二重星です。

2つの恒星が互いの周りを回る様は、天体に興味があるならばー度は見ておきたい星ですね。

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 さて神話では、一般的には白鳥座は大神ゼウスがスパルタの王妃レダのもとへ行ったときに化身した白鳥の姿だとされています。

 また別の神話として、太陽神アポローンの息子パエトーンが太陽を曳く馬車からエリダヌス川(エリダヌス座)に落ちたときその亡骸を探し続けた親友(もしくは兄弟の)キュグナスが白鳥に変化した姿だとされています。

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★白鳥のゼウス
 スパルタ王、テュンダレオスの妻レダは非常に美しかった。

 いつものことだが、大神ゼウスもまたその美しさに魅了され、なんとかレダをものにしたいと考えて一計を案じた。

 ゼウスは愛の女神アフロディテーに協力を頼み、アフロディテーに1匹の鷲に化けてもらい、自分は白鳥となってスパルタヘ赴いた。

 白鳥のゼウスはレダが窓辺にいるのを確かめると、彼女の見ている前でアフロディテーの化けた鷲にわざと追い回されはじめた。その様子を見ていたレダは白鳥をかわそうに思い、腕を広げて白鳥を呼んだ。

 ゼウスの化けた白鳥は得たりとばかりにレダの胸に飛び込み、想いを遂げたのである、このときの白鳥の姿が白鳥座になったといわれる。

 その後、レダは2つの卵を生み、その卵からカストルポルックス(双子座)、クリュタイムネストラヘレネの4人の子どもが生まれるのである。

 

★友を捜す白鳥
 太陽神アポローンの息子に、パエトーンという子がいた。

 パエトーンはアポローンの息子であることに誇りをもっていたが、友の誰もがそれを信じようとしないため、パエトーンはそれを確かめるためにアポローンの住む宮殿を訪ねた。

 アポローンはパエトーンが自分の息子であることを認め、その証拠に願いをなんでも1つ叶えてやろうと言った。

 するとパエトーンは、友人たちに自分がアボローンの息子であることを証明するために太陽を曳く馬車を操らせてくれと頼んだ。

 この意外な申し出に、アポローンはひどく渋った。馬車を曳く馬はひどく気性が荒く、アポローン以外ではたとえ神々といえども御することができなかったからだ。

 だがパエトーンはアポローンの言葉を盾に取り、反対を押し切って馬車とともに大空に飛ぴ出していった。

 馬車ははじめ順調に進むかに見えた。ところが、馬たちは手綱を取るのがアポローンでないと知るや途端に暴れはじめ(別説では、太陽の通り道である黄道にいたさそり座のそばを通ったとき、さそり座が馬の足を刺したために暴れたためともいう)、馬車は滅茶苦茶に走りはじめてしまった。

 馬車が近づいたものはすべて太陽の火に焼かれ、多くの森や都市が劫火に包まれた。エチオピア人(アフリカ人のことであろう)の肌が黒くなったのと、サハラ砂漠ができたのはこれが原因だといわれている。

 この惨状を収拾すべく、ゼウスは雷光を放ってパエトーンを撃ち殺した。パエトーンの亡骸は馬車から転げ落ち、はるか下方のエリダヌス川(エリダヌス座)へと落ちていったのである。

 その様子を見ていたパエトーンの親友(兄弟との説もある)キュグナスは、パエトーンの亡骸を探して、エリダヌス川の中を必死で捜し続けた。

 いつまでも友を捜し続けるキュグナスに哀れを感じたゼウスは、キュグナスを白鳥の姿に変えてやった。これがのちに天に昇り、白鳥座となったのだという。

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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」