や座

や座に関するお話をいくつかの書籍より集めています。

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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」編

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■よく見える季節:9月ごろ。
■20時南中の時期:9月12日
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 や座は夏の東の空、天の川の中ほどに見えるごく小さな星座です。

 星座の形はそれぞれ4等星と5等星が2つずつ、計4つの星が横にしたY字の形を描きます。形はそのまま矢の姿をしているので非常にわかりやすいです。

 や座はかなり古くから知られた星座で、ギリシアフェニキア、アラビアなどほとんどの地域で矢としてとらえられていました。

 ギリシア神話では、弓矢が剣や槍よりも頻繁に姿を見せます。おそらく剣や槍といった戦闘専門の武器よりも、弓矢のほうが狩りなど生活に密着した道具であったためでしょう。

 そうした背景もあって、この星座にまつわる神話は数多くあります。愛の女神アフロディテーの息子・愛の司神工ロース(キューピッド)の持つ恋の矢であるという説や、巨神族との戦いで活躍した鷲(わし座)が持っていた雷電の矢をあらわしたものとする説、また名医アスクレーピオス(へびつかい座)が大神ゼウスによって殺されたとき、アスクレーピオスの父である太陽神アポローンが復讐のために、ゼウスの雷光を作った工匠キュクロプスたちを射殺した矢であるともいわれています。

 ここではそうした伝説のひとつ、ヘラクレスとプロメーテウスの物語を紹介しましょう。

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★英雄と予言者
 スキュティス山の頂には、巨神プロメーテウスが岩に鎖で傑にされていた。

 プロメーテウスは神々の中でもとくに賢く、予言者としての力もあった。彼は人類にさまざまな知恵や文化を授けてきたのだが、教えることを禁じられていた火の秘密までも人類に与えてしまったために、ゼウスによってここにずっと縛りつけられていたのだ。

 彼に与えられた罰は身動きを取れなくするだけではなく、昼間になると無数の鷲がプロメーテウスの身体に襲いかかり、内蔵をついばんでひどい苦痛を与えた。

 なまじ神の身体をもっているために、夜になるとプロメーテウスの身体は癒え、内蔵は元どおりになってしまう。そしてまた翌朝になると鷲がやってくるのだ。延々と繰り返されるこの苦しみに、プロメーテウスはただじっと耐えるしかなかった。


 プロメーテウスが磔にされてから無限の時間が過ぎたかと思われたころ、プロメーテウスのそばを英雄ヘラクレスが通りがかった。ヘラクレスは狂気に陥って妻と子を殺してしまった罪を償うため、ティーリュンスの王エウリュステウスに仕えており、エウリュステウスの命令でヘスペリデースの園にあるという金の林檎を取りに行く途中だった(ヘルクレス座うしかい座を参照)。

 ヘラクレスはプロメーテウスが鷲に襲われているのを見ると、持っていた弓矢で鷲すべて撃ち落としてしまった。このときにヘラクレスの射た矢がや座になったという。

 プロメーテウスはヘラクレスに感謝し、金の林檎を手に入れるには天を支える巨神アトラス(うしかい座)に頼むといい、と知恵を授けた。この助言のおかげで、ヘラクレスは見事に金の林檎を手に入れることができたのである。

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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」