わし座
わし座に関するお話をいくつかの書籍より集めています。
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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」編
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■よく見える季節:9月ごろ。
■20時南中の時期:9月10日
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わし座は夏、東の空で事座と天の川をはさんで向かい合う位置にある星座です。
星座の形は1等星、a星アルタイル(「飛ぶ鷲」の意味)を中心に、やや形の崩れた十字形をしています。星図では下のほう、β(ベータ)星アルシャイン(襲う鷲)を頭にして、翼を広げて下降する鷲の姿として描かれています。星図によってはその爪に絶世の美少年ガニュメーデス(みずがめ座)をつかんでいることもあります。
わし座は古代バビロニアをはじめとしてギリシア、アラビアなど多くの地域で鳥としてとらえられてきましたが、古代ギリシアの詩人アラトスの著書「ファイノメイナ(星空)」ではわし座を「小さな形の」と形容しています。このことから察するに、当時のわし座は現在のように翼を広げた姿ではなく、(α、β、γの3つの星だけを指してわし座としていたのではないかと推測されています。このことは、琴座のα、ε、ζの3つを結んで「落ちる鷲」と呼んだのと対照しています。
日本では、アルタイルは七夕伝説に登場する彦星(牽牛星)で有名だが、ほかにも「犬飼星」「牛飼い星」などの名でも呼ばれています。アイヌでは「ウナルベクサ・ノチウ(老婆を渡す星)」の名でよびます。この名前は神が化けた老婆が川を渡りたがっているのを、一生懸命船を漕いで渡してあげた青年がその功績により星になった、という伝説に基づくものです。
ギリシアでは、数多くの神話に鷲が登場します。鳥は空の生き物であるために神々と結びつけて考えられることが多く、とりわけ鷲は雄壮で強い鳥であったから、大神ゼウスなどの強力な神と結びつけて考えられることが多かったのでしょう。
神話では、ゼウスが美少年ガニュメーデスをさらうために変化した鷲の話を紹介しましょう。
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★美少年をさらった鷲
トロイア国に、ガニュメーデスという美しい少年がいた。その美しさはいかなる美女よりも素晴らしく、噂はやがて天上界まで響いていった。
ガニュメーデスの噂を耳にしたゼウスは、鷲の姿をとって(あるいは使いの鷲を遣ったともいわれる)トロイア国まで出かけた。そしてイーダー山で羊を追いかけているガニュメーデスを目にし、その美しさに一目で参ってしまったのである。
ゼウスはさっそく鷲の爪でガニュメーデスをつかむと、そのまま天上界まで連れ去っていってしまった。そしてガニュメーデスに永遠の若さと命を与え、神々の宴席に待って神酒ネクタルを杯についで回る役目を与えたのである。
このときゼウスの化けた鷲の姿が星になり、鷲座になったという。また、ガニュメーデスはゼウスの寵愛を受け、水がめ座となったのである。
ゼウスはガニュメーデスの父親、トロイア王ラーオメドーンに息子の礼として風のように速く走る神馬を与えた。
ところがのちに、この神馬がラーオメドーンと英雄ヘラクレス(ヘルクレス座)の間に不和をもたらし、悲劇を招くことになる。
★トロイア後日譚
ラーオメドーンはトロイアの町に城壁を築こうと考えた。海神ポセイドンと太陽神アポローンはラーオメドーンの人格を試すため、普通の人間に変装し、城壁を築くのを手伝った。ところが城壁が完成してもラーオメドーンは規定の報酬を払おうとしなかったため、トロイアの町に両神の呪いが降りかかることとなった。
アポローンは町に疫病を流行らせ、ポセイドンは海から怪物を遺わして人々を襲わせた。困窮したラーオメドーンが神託を伺うと、王女ヘーシオネーを怪物の生け賛に捧げれば呪いはとけよう、と答えが返ってきた。
仕方なくラーオメドーンはヘーシオネーを海岸の巌にくくりつけた。だがちょうどそのとき、アマゾンからの帰途にあったヘラクレスがトロイアヘとやってきた。
ヘラクレスはラーオメドーンの持つ神馬を報酬とすることで怪物を倒すことを約束した。果たして英雄の前に怪物は倒され、ヘーシオネーは助かったのだが、ラーオメドーンはまたしても報酬を払うことを渋った。
ヘラクレスは先を急ぐ旅であったのでその場は引いたが、のちに12の功業を成し終えたあと、復讐のために軍隊を率いてlヽロイアを攻め滅ぼすのである。
★さまざまな伝説に見られる鷲
わし座についてはこの神話のほかにも、ゼウスが幼いころに神酒ネクタルを運んできた鷲であるという説や、神々と巨神族との戦いでゼウスの雷電を持って勲功を立てたので星になったという説、また人間に神々の秘密を教えたために岩山に傑にされた巨神プロメーテウスの内蔵をついばむ鷲という説もある(や座を参照)。
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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」