さそり座 神話

 

さそり座に関する神話をいくつかの書籍より集めています。

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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」編

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★大サソリとオリオンの死
 狩人オリオンは海神ポセイドンとミノス王の娘エウリュアレーとの間にできた子で、人並み外れて立派な体格の持ち主だった。
 あるとき、オリオンはキオス島の王、オイノピオンの娘メロペを見初め、オイノピオンにメロペとの結婚を申し込んだ。

 だが粗暴なオリオンを快く思わないオイノピオンは、オリオンを酒宴に招いてしたたかに酔わせ、眠ってしまったところで両目をつぶして浜へ放り出してしまった。
 目を覚ましたオリオンは目が見えぬことに困り果ててしまったが、「東の国へ行き、朝日の光を目に受ければ、再び目が見えるようになる」という神託を受け、鍛冶の神ヘパイストスの工人(=職人)、少年ケダリオンの助けを受けて、彼の誘導で東の国へと向かった。そして東の国で日の神ヘリオスに出会ったオリオンは、その光を受けて再び目が見えるようになった。

 オリオンはオイノピオン王に復讐しようとキオス島に戻ったが、オリオンがやってくることを知ったオイノピオンはヘパイストスが作った地下室に隠れてしまった。
 王に忠実だった島民たちも決して彼の居場所を口外しなかったので、オリオンは復讐をあきらめざるを得なかったのである(オリオン座を参照)。

 仕方なくキオス島をあとにした英雄オリオンはクレタ島に渡り、そこで月の処女神アルテミスと出会った。

 オリオンはしばらくの間、アルテミスとともに狩りをして過ごしていたが、あるとき「俺はこの地上のありとあらゆる獣をことごとく射止めてみせる」と大言壮語した。

 この言葉を聞いて怒った女神ヘーラー(あるいは大地母神ガイア)は、1匹の大サノリをオリオンのもとに遣わし、彼をその毒の尻尾で刺し殺させた。

 このときオリオンを殺した大サソリがヘーラーによって功績をたたえられ、天に昇ってさそり座となったのである。

 オリオンも天に昇ってオリオン座となったが、星となったいまでもサソリを恐れており、さそり座が昇る時分になるとオリオン座が沈みはじめるのはそのためだという。

 

 なお、オリオンの死についてはいくつかの異伝がある。

 アルテミスとともに狩りをして暮らすうち、オリオンは彼女に恋心を抱くようになった。
 アルテミスもまたオリオンを憎からず思っていたか、そのことを知ったアルテミスの兄、太陽神アポローンはオリオンを殺そうとたくらんだ。

 オリオンが海を渡っているときを見計らい、アポローン海上に突きだしているオリオンの頭に金色の光を吹きつけた。
 そしてなにくわぬ顔でアルテミスのもとを訪れ、「いかにおまえが弓の名手でも、あの波間に漂う金色のものを射抜くことはできないだろう」とアルテミスを挑発した。

 アルテミスは怒って弓と矢を手に取ると,その金色のものがオリオンの頭だとは知らず、見事それを撃ち抜いてしまった。

 やがて波うち際に打ち上げられたオリオンの亡骸とその頭に刺さった自分の矢を見て、アルテミスは自分がオリオンを殺してしまったことを知った。
 アルテミスは嘆き悲しみ、自分が天の道を通るときにいつでも見えるようにと天上の星座としたのであるという。


 また別の説ではアルテミスがオリオンに恋をしたものの,オリオンは曙の女神エーオース(もしくはアウローラ)に言い寄ったためにアルテミスが嫉妬にかられて殺したとも、アルテミスに乱暴を働こうとしたオリオンをアルテミス自身が返り討ちにして殺したとも伝えられる。

★パエトーンの馬車
 太陽神アポローンの息子の1人に、パエトーンという少年がいた。

 パエトーンは自分の父がアポローンであることに誇りをもっていたが、友は誰も彼父ががアポローンであると信じようとしなかった。そこでそれを証明するため、パエトーンは遠くのアポローンの住む宮殿まで出かけて行った。

 アポローンはパエトーンが自分の息子であることを認め、その証拠としてなんでも望みを1つ、叶えてやろうと語った。

 するとパエトーンは、太陽を曳く馬車を操らせてほしいと願った。

 この申し出にアポローンは渋った。馬車を曳く馬はひどく気性が荒く、アポローンでなければ御することができなかったからだ。
 しかしパエトーンはアポローンの言質を盾に取り、アポローンが止めるのも聞かずに馬車に乗って飛び出してしまった。

 天空を駆ける馬車の乗り心地は素晴らしいものだった。パエトーンが下界に向かっ手を振ると、パエトーンの友人たちは驚いて見送った。

 だが、すべてがうまくいくと見えたそのとき、異変が起こった。

 太陽の通り道とはいうまでもなく黄道だが、ちょうど蠍座のわきを通り過ぎたとき、サソリが馬の足を尻尾の毒針で刺してしまったのだ。馬は暴れ出し、滅茶苦茶に走りはじめた。

 放っておいては大惨事になると見た大神ゼウスは、雷光を放ってパエトーンを打ち殺した。パエトーンの亡骸は、はるか下のエリダヌス川に落ちてしまったという(白鳥座を参照)。

 

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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」