ペガスス座とこうま座

 ペガスス座とこうま座に関するお話をいくつかの書籍より集めています。

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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」編

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オオカミ座

■よく見える季節:10月ごろ
■20時南中の時期:10月25日


さいだん座

■よく見える季節:10月ごろ。
■20時南中の時期:10月5日

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 ペガスス座は秋、南東の空に浮かぶ、かなり大きな星座です。

 星座の形は、巨大な四辺形の胴体にこころもち顎を引いた馬の頭部と、前に大きく伸ばしていまにも駆け出そうとする姿勢の前足がついています。

 ベガスス座のユニークなところは、星座の一部を隣のアンドロメダ座と共有していることです。ペガスス座のα(アルファ)星マルカブ(「乗り物」。転じて馬や駱駝)、β(ベータ)星シェアト、γ(ガンマ)星アルゲニブと、アンドロメダ座のα(アルファ)星アルフェラッツ(「馬のへそ」。古代アラビアでは「アル・ラス・アル・マラー・アル・ムサルサラー」、鎖につながれた女の頭と呼び、こちらのほうがアンドロメダ座の星名としてはふさわしいですが、今日では使われていません)を結んだ巨大な四辺形がペガススの胴体となっています。この四辺形は「ぺガススの四辺形」と呼ぱれていて、1辺の長さが約15度もあります。

 神話では、ペガスス座は妖怪メドウーサの血から生まれてきた、翼をもつ天馬ペガサスとされています(―脱には、海神ポセイドンとメドウーサとの交わりでできた胤(たね)ともいわれています)。


 こうま座はペガスス座の頭部といるか座の間にある、全天で2番目に小さい、目立たない星座です。形は4つの星が小さなゆがんだ台形をしていて、星図では馬の頭部だけが描かれます。ちょうどペガスス座の向こうにもう1頭の馬がいるように見えるので、小馬の名が与えられたのだと推測されています。


 神話では、こうま座はペガサスの弟にあたるケレリスという馬で(ペガサスの出生を考えるといささか奇妙です)、伝令神ヘルメスが英雄カストル(ふたご座)に与えたものだといわれています。別説では、旧約聖書の「エステル記」第4章に登場する馬だというものもあります。とはいえ、残念ながらこうま座には神話・伝説となるほどの話は残っていません。

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★血と岩から生まれた天馬
 大神ゼウスとアルゴスの王女ダナエーの子に、ペルセウスペルセウス座)という英雄がいた。

 ベルセウスとダナエーは、まだペルセウスが赤子の時分に祖父であるアルゴス王アクリシオスによって箱に入れられ、海に流された。アクリシオスが受けた「ダナエーの生む男児が、おまえを殺すだろう」という予言を恐れたためである。

 やがて2人はセリーポス島に流れ着き、新たな生活をはじめることとなった。

 ペルセウスはすくすくと育って成人し、なんの問題もないように思えたが、セリーポス島の王ポリュデクテースがいまだ容色の衰えぬダナエーに想いをかけ、邪魔なベルセウスをなんとかして排除しようと考えた。

 そこでポリュデクテースはペルセウスに、妖怪ゴルゴーンの首を取ってくるように命じた。

 ゴルゴーンとは蛇の頭髪と猪の牙をもち、視線を合わせた者を即座に石に変えてしまうという恐ろしい不死身の怪物3姉妹である。この怪物相手では、さしものペルセウスも生きて帰れる見込みはあるまいとポリュデクテースは考えたのだ。

 しかしペルセウスは戦女神アテナら神々の助けを得て、長い旅の末にゴルゴーン3姉妹のうち唯一不死身ではなかった末妹・メドゥーサを倒すことに成功した(ペルセウス座を参照)。

 このとき、切り落としたメドゥーサの首から血が飛び散り、岩にしみ込むと、そこから翼を生やした天馬、ペガサスが生まれ出てきたのである。

 ペルセウスはペガサスに乗り、帰途に着いた。途中、エチオピアでクジラの怪物の生け賛にされていたアンドロメダ姫(アンドロメダ座)を助けて一子ペルセースをもうけた。そして1年後、ペルセウスは故郷セリーポス島でポリュデクテースに復讐を果たすのである。

 その後、ペガサスはメドゥーサの首と一緒にアテナに捧げられ、のちに詩の女神ムーサイたちに与えられた。ペガサスはムーサイたちの住むヘリコーン連山に放たれると、地面を蹴り、その蹄の跡から泉を湧き出させた。その泉は「ヒッポクレーネー(馬の泉)」と呼ばれている。

 

★神になろうとした勇者
 ベレロポーンは眉目秀麗、武術と勇気に優れた、コリントスで並ぶ者なき勇者だった。その勇者ぷりは、ペイレーネーの泉で水を飲む天馬ペガサスを女神アテナから受け取った黄金の手綱で捕らえ、乗りこなすほどだったのだ。

 さて、ペレロポーンがアルゴス王プロイトスのもとに身を寄せていたとき、プロイトスの妻アンテイアがベレロポーンに懸想し、しきりに言い寄ってきた。

 しかし、誇り高い青年であったベレロポーンはそのような不貞の恋を激しく非難し、アンテイアの誘惑をすべてはねつけた。

 怒ったアンテイアは自分の衣服を裂き、プロイトスに「ベレロポーンに襲われそうになった」と嘘を告げた。

 プロイトスはベレロポーンの忘恩に怒り狂ったが、自分の客人を殺すことは道義にもとることだった。そこでベレロポーンをアンテイアの父であるリュキア王イオバテ-スのもとへ、「なんとか手段を講じてこの男を始末してくれ」という手紙と一緒に送った。

 手紙を読んだイオパテースは、ベレロポーンに国を荒らしていた怪物キマイラの退治を命じた。キマイラは獅子と牡山羊の頭をもち、口から火を吐くという恐ろしい化け物である。これならぱ、ベレロポーンとてかなうはずもあるまいと思ったのだ。

 ところが、ペレロポーンはペガサスに乗って意気楊々と飛び出し、キマイラに巨大な鉛の塊を投げつけて、あっさりと殺してしまった。

 イオパテースは、そのほかにもソリュモイ人やアマソンの女戦士族の討伐を命じたが、ベレロポーンはそれらを難なくやってのけ、最後にはイオバテース白らがペレロポーンを殺すべく雇った兵士たちをも皆殺しにした。

 ここにきてイオバテースもベレロポーンをただ者ではないと認め、末の娘と自分の国の半分を与えて、大いにもてなしたのである。

 だが、ベレロポーンはこれらの成功に気を良くし、驕り高ぶってしまった。

 あるとき、彼は自分こそ神々の一員になるにふさわしいと思い、ペガサスに乗って天上界へ昇ろうとした。だが大神ゼウスは、ベレロポーンのこの思い上がった行為に怒りを覚え、1匹の虻を遣わしてペガサスの尻を刺させた。するとペガサスは途端に暴れ出し、ペレロポーンを振り落としてそのまま天へと走り去ってしまったのである。

 ベレロポーンはアレイオーンの野に落ちて片足を失い、惨めな晩年を送ったという。

 そして天上界まで走ったペガサスはゼウスの雷光を運ぶ軍馬となり、やがて星となった。これがペガスス座である。

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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」