ぎょしゃ座

ぎょしゃ座に関するお話をいくつかの書籍より集めています。

~~~~~~~~~~ 

「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」編

~~~~~~~~~~

■よく見える季節:2月ごろ(一部南天)。
■20時南中の時期:2月15日
~~~~~~~~~~

 ぎょしゃ座は晩冬、天頂近くの北の空に見える、比較的大きな星座です。

 星座の形は、やや長細い五角形の胴体に小さな腕がついています。ただ、胴体の左下の星、γ(ガンマ)星エルナトは現在では牡牛座のβ星とされており、ぎょしゃ座のγ星は欠番となっています。

 ぎょしゃ座のα(アルファ)星カペラは、全天の中ではもっとも北極に近い1等星です。真夏を除けばほとんど北の空に1年中その姿を見ることができるので、古代バビロニアでは「ディルガン」または「イク」と呼び、最高神マルドウクの星として崇拝していました。

 インドでも同じく最高神である「ブラフマーの胸」とよびました。アラビアでは「星の長」と呼び、またカペラのそばにある牡牛座のプレアデス星団を駱駝の群と見て、それを串いる「駱駝使い」と呼ぶこともありました。

 また、ぎょしゃ座の左ひじにあたる2つの星ζ(ゼータ)星ホエドウス・プリムス、η(イータ)星ホエドウス・セクンドウスは古代ギリシアでは小山羊(こやぎ)座として、独立した星座の名が与えられていました。現在でもラテン語の辞書の中には、ハエディ(ホエドウスの複数形)を小山羊座と記載するものがあります。

 星図では、ぎょしゃ座は子鹿(山羊、羊との説もあり)を抱いた、もしくは鞭を持った男の絵として描かれています。なお、ぎょしゃ座の馭者は荷馬車などを運転する人ではなく、古代の4輪戦車を駆る戦士のことです。

~~~~~~~~~~

★蛇王エリクトニオス
 鍛冶の神ヘパイストスは女神の中でももっとも美しいといわれる美神アフロディテーを妻としていたが、多くの愛をつかさどるアフロディテーもまた気が多く、なかぱ公然と軍神アレースと浮気していたのでヘパイストスは欲求不満気昧であった。

 そんなあるとき、戦女神アテナがヘパイストスに武器の製造を頼みにやってきた。

 アテナは猛々しい戦神ではあるが、その一方で凛々しい美しさももち合わせていた。ヘパイストスはそんなアテナの姿を見て欲情を爆発させ、アテナを追いかけた。

 驚いたアテナは逃げ出したが、ヘパイストスは驚くべき素早さで追いすがり、大地に組み敷いた。しかしアテナの激しい抵抗にあい、ヘパイストスは想いを遂げることはできなかった。

 その際、ヘパイストスの放った精がアテナの身体にかかった。アテナがそれを羊毛でふき取って地面に落とすと、そこから1人の赤子が生まれた。

 アテナはその赤子をエリクトニオスと名付け、箱に入れてアテナイの初代王ケクロプスに「決して中を見てはいけない」と言って預けた。

 箱はケクロプスの3人の娘、アグラウロス、ヘルセ、パンドロスの手によって大切にしまいこまれたが、やがて娘たちはどうしても箱の中を見たいという誘惑に駆られろようになった。

 そしてある日、とうとう娘たちは誘惑に負けて箱の中を覗いてしまったのである。

 娘たちは中を見て凍りついた。箱の中にいたのは赤子にからみつく、1匹の大蛇だったのだ(あるいは下半身が蛇の赤子とも、蛇そのものがいたとも伝えられる。なお。

ケクロプス自身も大地から生まれ、下半身が蛇であったという伝説がある)。

 その姿の恐ろしさに娘たちはたちまち気がふれてしまい、次々にアクロポリスの崖から身を投げて死んでしまった。

 さて、エリクlヽニオスはすくすくと育ち、やがてアテナイ3代目の王アンピクテュオンを追放し(あるいは跡を継いで)4代目の王となった。

 しかし、エリクトニオ.スは生まれつき足が不自由であった(このあたりについては、赤子の時分に蛇が足にからみついていたため、または下半身が蛇そのものであったため、または彼の父が足の悪いヘパイストスであったため、などさまざまな説明がある)。そこでエリクトニオスは馬に曳かせる戦車(チャリオット)を発明し、王として勇敢に振る舞ったといわれる。

 そのほかにもアクロポリスにアテナ像を建てたり、アテナを祀るパンアテナイア祭を開催したりとアテナ女神に尽くしたため、死後は神々に天上に昇ることを許され、ぎょしゃ座となったのである。

 ちなみにこの話には蛇が多く登場するが、蛇はアテナ女神の使いであり、大地の女神のシンボルでもある。

~~~~~~~~~~

「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」