おおぐま座 こぐま座

おおぐま座 こぐま座に関するお話をいくつかの書籍より集めています。

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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」編

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おおぐま座

■よく見える季節:春。5月ごろ
■20時南中の時期:5月3日

 

こぐま座
■よく見える季節:春。通年
■20時南中の時期:7月13日
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 北の空に浮かぶ大熊座は、代表的な春の星座です。


 星座としてはその名の示すとおり大きなほうで、星の並びは4つ足でのっそり歩く、尻尾の長い熊の姿をうまく描いています。


 少しでも星空に興味がある人ならば北斗七星をご存じの方も多いでしょう。このおおぐま座の背中から尻尾にあたる部分が北斗七星にあたります。おおぐま座全体からすると、北斗七星の受け皿の部分が、ちょうど熊の背につけられた鞍のように見えます。


 おおぐま座が現在のような形になったのは古代ギリシアですが、不思議なことにほかの地方でもこの星座、もしくは北斗七星を熊として見ているところが多いのです。

 

 インドでもこの星座を熊として見ていたといい、またアイヌの伝説にも神に逆らって殺された熊が北斗七星になったという伝説があります。さらに近世になってアメリカ大陸が発見されたころ、その土地のネイティブ・アメリカンまでもが「あの星々は熊だ」と北斗七星を指して言ったそうです。古代ギリシアはもちろん、それまでアジア・ヨーロッパとかかわりをもたなかった彼らが同じようにこの星座や北斗七星を熊として見ていたことは、なにか神秘的なつながりを感じさせますね。


 また、北斗七星は「車」と呼ばれることも多いです。これは形が馬車・人力車に似ていること、北極星の周りをぐるぐると回っていることの2つに由来するようです。古代バビロニアでは「マルギッダ・サンプ(大きい車)」、スカンディナビアでは「大神オーディンの車」「雷神トールの車」、中国では「帝車」、イギリスでは「アーサー王の車」「チャールズ王の車」といわれたこともあります。またギリシアの詩人ホメロスは「車とも呼ばれる熊」と記しているので、おそらくギリシアでも熊と車、2つの見方があったと思われます。


 日本ではさまざまな呼び名があり、「北斗さま」「七曜の星」「四三の星(“しそぼし”ともいう)」「舵星」などが代表的です。

 

 蛇足ながらつけ加えておくと、北斗七星の受け皿の端、α星ドゥベー(大熊)とβベータ星メラク(腰)を結んだ線をそのまま5倍すると北極星にたどりつきます。

 

 古来より北極星を見つけるために用いられてきた方法ですが、日本では冬の一時期、北斗七星が地平線下に沈んでしまいます。このときは北極星をはさんでほぼ真反対にあるカシオペア座から北極星の位置を見つけるのですが、カシオベア座は日本では「錨星」と呼ばれており、舵と錨が対照的に存在しているのはなんともおもしろいですね。

 

 

 こぐま座北極星を含む、おおぐま座とともにかなり有名な星座です。


 形は北斗七星をそっくりそのまま小さくしたように、7つの星が柄杓の形に並んでいます。そのため小熊座を北斗七星に対して「小北斗」、または「小柄杓」と呼ぶこともあります。古代バビロニアでは北斗七星に対し、「マルギッダ・アンナ(小さい車)」の名で呼んでいました。


 柄杓の柄のいちばん端が北極星の2等星ポラリスで、古来より方角を知るための重要な星でした。現在では歳差運動により真北からは1度弱ずれており、次にもっとも真北に近づくのは西暦2102年と予測されています。


 日本では北極星を指して「北辰」「妙見」と呼ぶことがあります。これはどちらも日蓮宗および真言宗の妙見信仰に基づくものです。妙見(妙見菩薩)とは北極星の菩薩で人々を災害から守る役目をもっているとされています。

 

 また、別の一般的な名として「子(ね)の星」とも言います。これは十二支でいうと子は北の方角にあたるからです。

 

 ギリシア神話ではおおぐま座は月の処女神アルテミスの侍女、カリストーの変化した熊とされていて、こぐま座カリストーと大神ゼウスの間にできた息子アルカスの変化した熊の姿といわれていまする。

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 夜空をくるくると回り続けるこの2つの星座には、とても悲しい神話がある。

★悲劇の親子
 月の処女神アルテミスの侍女の中に、カリストーという娘かいた。


 カリストーは化粧もせず、野山で走り回って狩りをするのが好きだったが、快活で鹿のように美しかった。


 ある日、カリストーを見初めたゼウスはアルテミスそっくりに姿を変え、カリストーに近づき、力づくで捕らえた。


 ゼウスは欲望を満たすと、涙に濡れるカリストーを置いて1人帰ってしまった。


 やがてカリストーは身ごもり、時満ちて息子アルカスを生んだ。


 ところが、アルテミスは処女の神であったので、自らの侍女の中に処女でない者がいたことを知って激怒し、カリストーに呪いをかけて、1頭の熊に姿を変えてしまった(あるいはゼウスの妻ヘーラーが嫉妬してカリストーを熊に変えた、という説もある)。


 醜い熊の姿になってしまったカリストーは、アルテミスのそばを離れ、赤子のアルカスを置いて森の奥へと姿を消してしまった。


 それから幾年月がたち、アルカスはすくすくと育っていった。やがて少年へと成長するころには、アルカスは一人前の立派な狩人となっていた。


 さてアルカスが獲物を求めて森を歩いていたときのこと。熊として森の奥で暮らしていたカリストーは偶然、茂みの向こうからやってくるアルカスを見つけてしまった。


 カリストーにはその狩人が自分の息子だとすぐにわかった。熊になってしまったとはいえ、カリストーは息子のことを忘れたことはなかったのだ。息子に出会えた嬉しさに、カリストーはつい我を忘れて茂みを飛び出してしまった。


 ところが、アルカスには茂みから突然飛び出してきた熊が白分の母などとはわかりようがない。アルカスはあわてて持っていた弓に矢をつがえ、熊の心臓に狙いを定めて弓を引き絞った。


 矢が放たれようとする瞬間、この一部始終を天上界から見ていたゼウスは、アルカスに母殺しの罪を犯させるわけにはいかないとつむじ風を起こし、2人を天に巻き上げた。そしてアルカスを小熊に変え、カリストーともども天上の星とした。


 こうしてカリストーは大熊座に、アルカスは小熊座になったのである。


 だが、夫の浮気を常に腹立たしく思っていたヘーラーは、河神オケアノスと海の老神ネーレウスの娘、テティスのもとへと赴き、2人に頼んでカリストーとアルカスがほかの星々のように日に1度、海の中に入って休むことができないようにしてしまった。このため、大熊座と小熊座は1年中、休むことなく北の空を回り続けることになってしまったのだという。


 これはギリシア・ローマ地方では北斗七星は地平線下に沈まないことから生まれた逸話であるといわれている。


 なお、木星はゼウスのローマ名であるジュピターの名が与えられているが、木星の第4衛星の名がカリストーというのはこの神話によるものである。

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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」