オオカミ座とさいだん座

 オオカミ座とさいだん座に関するお話をいくつかの書籍より集めています。

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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」編

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オオカミ座

■よく見える季節:7月ごろ(一部南天)。
■20時南中の時期:7月3日


さいだん座

■よく見える季節:8月ごろ(一部南天)。
■20時南中の時期:8月5日

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 オオカミ座とさいだん座、この2つの名を知っている人はかなりの星座通ですね。

 

 オオカミ座はケンタウルス座のすぐ東にある、小さな星が集まってできた星座です。星座としての大きさは中くらいで、形はやや竿立ちになった細身の4足動物を横から見たところ、という感じです。

 ギリシアでは古くから知られていた星座であり、当時は単に「セリオン(野獣)」と呼ばれていました。星図では、オオカミ座はケンタウルス座につかまれていたり、あるいはケンタウルス座の持つ槍に貫かれている姿で描かれることもあります。このことからオオカミ座はケンタウルス座の一部と見られたり、あるいはケンタウロスが神々に捧げる供物の鋤物として見られ、「ホスティア(犠牲)」「ヴィクティマ・ケンタウリ(ケンタウロスの犠牲)」という名で呼ぱれることもありました。

 オオカミ座は地平線ぎりぎりにあるため、東京からもっとも見やすい7月ごろでも星座の下3分の1は地平線下に沈んでしまいます。資料によっては南天の星座とするものもあります。

 オオカミ座は神話では、フランスの天文学者R.H.アレンの説によるとアルカディア王リュカオーンの姿だとされています。

 

 さいだん座はさそり座の南、オオカミ座の東にある小さな星座でする。形は少しゆがんだ菱形と台形がくっついていて、星図では供物を燃やす炎を戴いた祭壇の姿で描かれています。

 さいだん座はオオカミ座よりさらに南にあり、しかも明るい星はまったくないので見つけるのは難しいです。ですがギリシアでは古くから知られていた星座で、紀元前2~3世紀の詩人アラトスが天文詩『ファイノメイナ(星空)』の中で「犠牲を捧げるもの」としてふれています。中世から近世にかけては「トウリブルム(香炉)」とも呼ばれました。


 神話では、さいだん座はバベルの塔の頂上に建つ神殿の祭壇をあらわしたもの、あるいはケンタウロスが捕らえた獲物である狼を生け賛に捧げる祭壇、さらにまたはリュカオーンの一族が大神ゼウスに供物を捧げるために、リュカイオス山に作った祭壇という説があります。

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★オオカミ人間の一族
 アルカディア地方にリュカオーンという王がいた。リュカオーンは数多くの女性たちとの間に50人の息子と1人の娘をもうけたが、50人の息子たちは皆、高慢で意地が悪く、アルカディアの民を苦しめていた。

 その悪評を耳にしたゼウスは、彼らがどれほどの悪人かを試すため、旅人の姿に化けてリュカオーンの宮殿を訪れた。

 するとリュカオーンの息子たちは、リュカオーンの孫のアルカス(小ぐま座)を殺し、その臓器を抜き取って、それを料理に混ぜてゼウスをもてなしたのである。

 このあまりに非道な行いに激怒したゼウスは正体を現し、驚いて逃げまどうリュカオーンの息子たちを、もっとも幼かったニュクティモスを除きすべて雷を投げつけて殺してしまった。


 ゼウスはリュカオーンを捕らえ、この行いの共犯者として罰を与えた。リュカオーンの姿をその残虐で非道な性質にふさわしい生き物、つまりオオカミに変えてしまっかりである。

 のちにこのオオカミが天に昇ってオオカミ座になったのだといわれる。

 なお、このとき死んだはずのアルカスはゼウスによってよみがえった。

 ごのの事件以後、リュカオーンの一族は深く神を敬うようになり、リュカイオス山にゼウスのための祭壇(ゼウス・リュカイオス)が作られた。アルカディアの民はここで生け賛となる人間を殺し、その肉を食らった者はオオカミになってしまうのだという(8年間、1回も人間の肉を□にしなけれぱ9年目に人間に戻れる)。

 この祭壇は実際に存在しており、さらに古代においては人身御供を捧げる習慣も本当にあったようだ。あるいはそこで行われていた野蛮な祭祀から、リュカオーンの伝伝説が生まれてきたのかもしれない。

 もうひとつ余談であるが、リュカオーンのたった1人の娘とは、月の処女神アルテミス(あるいは女神ヘーラー)の不興を買って大ぐま座となったカリストーである。また、さらにその末裔にあたるアタランテはアフロディテーによってライオンに変えられている。

 どうもリュカオーンの一族は、獣に変化させられる運命にあるようだ。

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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」