いるか座
いるか座に関するお話をいくつかの書籍より集めています。
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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」編
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■よく見える季節:9月ごろ。
■20時南中の時期:9月26日
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いるか座は夏、天の川のほとりに見える、小さな菱形に尻尾のついた星座です。
3等星以上の星はなく、あまり明るい星座ではありませんが、形が天の川で飛び跳ねるイルカをたやすく思い浮かべさせ、とても印象深いです。
地中海に面したギリシアだけに、イルカに関する神話、伝説は比較的多いです。シチリア島をはじめ、各地の都市国家でイルカをモチーフにしたコインが作られています。やはりイルカの賢さと愛らしさが、ギリシアの人々をひきつけてやまなかったのではないでしょうか。
日本ではいるか座はその形どおり菱星と呼ばれている地域もあります。また、ヨーロッパの一部では聖書に登場する「ヨブの棺」と呼ぶところもあるそうです。
いるか座のα(アルファー)・β(ベータ)星はそれぞれスアロキン(Sualocin)、ロタネヴ(Rotanev)
という名前が付いていますが、これについてはちょっとおもしろい話があります。
この2つの星に名前を付けたのは19世紀のイタリアの天文学者ジュゼッペ・ピアッツィですが、その助手で、のちに後継者となったニコロ・カッチァトーレ(NicolloCacciatore)という人がいました。
この「ニコロ」をラテン語に直すと「ニコラス(Nicolaus)」となります。また、「力ッチァトーレ」というのはイタリア語で「狩り」の意味ですが、これを同じ意味のラテン語に直すと「ヴェナトール(venator)」となります。
これらのスペルを逆から読むと、スアロキン、口タネヴとなることに気付かれましたでしょうか? まるでジョークのようですが、ピアッツィとカッチャトーレのユーモアセンスを感じさせます。
ここで紹介する神話は数あるいるか座の神話の中からもっとも有名なもの、楽人アリオンを救ったイルカの話と、海神ポセイドンと精女アンフィトリテを結びつけたイルカの話を紹介しましょう。
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★楽人アリオン
エーゲ海に浮かぶレスボス島に、アリオンという優れた楽人がいた。
あるとき、アリオンはコリントスの王ペリアンデルの命令を受け、音楽コンクールに出場するためにシチリア島へ赴いた。
アリオンはその優れた楽才を遺憾なく発揮し、コンクールで見事優勝して莫大な賞金を手に入れた。
さてコンクールが終わったあと、アリオンはペリアンデルの宮殿に戻るために船に乗った。
船は洋上に滑り出し、天候も良く、すべては順調にいくかと思われた。
どころが船旅の途中、船員たちがアリオンが大金を持っていることを知り、それを奪おうと襲いかかってきたのだ。
アリオンは甲板の縁に追いつめられた。陸地は遠く、泳いで逃げるわけにもいかな そこでアリオンは「せめて楽人らしく死にたい。私に曲を弾かせてくれないか」と言った。
アリオンは船縁に立つと、美しい音色で琴をかき嗚らした。
するとその音色に魅かれてたくさんのイルカが集まってきた。アリオンは海中に身を躍らせイルカの背にまたがって、無事ペリアンデルの宮殿へとたどり着いたのである。
この功績により、イルカは天に昇げられて海豚座となったのだといわれる。
なお、アリオンを襲った船員たちはレスボス島に着いたあと、アリオンが乗っていないことについて□々にでまかせを言ったため、全員が傑にされたという。
★ポセイドンの使い
ある日、海神ポセイドンは1人の精女に心を奪われた。海の老神ネーレウスの娘、アンフォトリテである。
ポセイドンはアンフィトリテがほかの娘たちと楽しく踊っているところに近寄り、強引にアンフィトリテをさらって妻とした。だが、アンフィトリテはポセイドンが嫌でたまらず、隙を見て逃げ出してしまった。
ポセイドンは世界中を探し回ったが、アンフィトリテの居場所はわからなかった。
なぜなら、アンフィトリテは海神オケアノス(オケアノスは大神ゼウスたちオリュンボス神族以前に世界を治めていたティタン神族の生き残りとされている。ポセイドンのように海を統べる神、というよりは海・河川そのものという存在だったようだ)のもとに逃げ込み、かくまってもらっていたのだ。
彼女の居場所を見つけたのは、ポセイドンの巻属たる1匹のイルカだった。ポセイドンはアンフィトリテに頭を下げて頼み込み、ようやくアンフィトリテと和解することができた。この功績により、イルカは天に昇げられてイルカ座となったのだという。
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「星空の神々-全店88星座の神話・伝承」